Web業界がいくら自由でも他社の権利は守るべき 〜コルシカ運営終了

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一時期、Webサービス上における権利処理に関しての議論を再燃させるきっかけとなっていた、雑誌をスキャンしたデータをネット販売するサービス「コルシカ」が3月25日に終了となることが明らかになりました。昨年10月にオープンし、その直後に日本雑誌協会から著作権侵害で抗議され、開始から約1週間で販売を中止していました。

その際、エニグモはサービスについて「雑誌を購入したユーザーのスキャンを代行しているという位置付けで、ユーザーの私的利用の範囲。著作権侵害には当たらない。ビューワにはDRMもかけており、不特定多数に送信することもできない」と説明していましたが、本当に著作権侵害に当たらないのでしょうか。

録画ネット事件、まねきTV事件の判例を参考に

「録画ネット」「まねきTV」とは?

コルシカと同様のサービスで裁判に至り、判決が出ている事件として、「録画ネット事件」「まねきTV事件」の2例があり、それぞれ全く異なる判決が出たことが話題になりました。しかし、確かにそれぞれ状況が異なり、ある程度納得が行く判決が出たと言えます。

有限会社エフエービジョンが運営する「録画ネット」、永野商店が運営する「まねきTV」は、共に海外に在住する向けに提供する録画代行・転送サービスです。

「録画ネット」では、まずテレビチューナーとキャプチャーカードを搭載したパソコンを購入し(実際は録画ネットが代行)、それを同社に預ける形で番組を録画してもらい、ワン・ツー・ワンでデータを送信するというものです。対して、「まねきTV」では、ソニーの「ロケーションフリー」という機器を活用しました。「ローケーションフリー」は、「録画ネット」がLinux搭載PCで実現したことをコンシューマー向けの家電製品として製品化したものです。「まねきTV」は、利用者が家電量販店などで自分でロケフリを購入し、これをまねきTVに宅配便で送って、都内にあるデータセンターに保管することで、データ送信を実現しました。

双方に対してテレビ局各社が共同で差し止め訴訟を起こしましたが、結果は「録画ネット」が敗訴、「まねきTV」は控訴棄却となったわけです。

異なる判決が出た理由

ここでの違いはどこにあるのでしょうか?

「録画ネット」が録画を行うPCはすべて「録画ネット」側で用意しており、利用者は名目上の所有者でしかない。つまり、実質は「録画ネット」が運営主体となっていると裁判所は判断しました。

それに対し、「まねきTV」では、「ローケーションフリー」は利用者が購入して運営会社に送付しており、あくまでも「主体は利用者」と裁判所は判断したわけです。

つまり、録画/視聴の主体がどこにあるかに応じて、異なる判決が出たというわけです。

録画ネット事件、まねきTV事件の判例から見て取れる「コルシカ」の違法性

結局のところ、これらの判例から見る限り、明らかに「コルシカ」が違法だということが明確になります。

コルシカでは雑誌の購入はコルシカが代行します。利用者は決して雑誌を手にとることはできません。つまり、運営主体は実質的にはエニグモにあると判断することができます。エニグモは、「雑誌を購入したユーザーのスキャンを代行しているという位置付けで、ユーザーの私的利用の範囲。著作権侵害には当たらない。ビューワにはDRMもかけており、不特定多数に送信することもできない」と説明していましたが、これらの判例を鑑みると、やはり違法性が高いサービスであることは明確です。

他社の権利を侵害せずにサービスを提供することは最低限必要である

エニグモは本件において、法的な検討を何度も重ねたと言いますが、本当にしっかりと検討をしたのでしょうか。「YouTubeなど違法コンテンツが溢れ返るサービスであったとしても、人が集まったら権利者がYesと言わざるを得ない。そうなれば、誰も文句など言えない」というような安易な考えでサービスを始めてしまったということはなかったのでしょうか。

本件に関して言えば、法律の素人である僕が簡単に調べただけでも類似の判例を見つけることができました。日本の裁判所は基本的に判例に基づいて判断を下す傾向が強いため、今回の件が裁判沙汰になったとしても、エニグモが負けていた可能性は非常に高いと思います。

他人のコンテンツを使って金を稼ぐのはいいが、なりすましはよくない」というエントリーにも書きましたが、Web業界は文化的にマッシュアップが許されている傾向が強く、他人のコンテンツで金を稼ぐという行為に甘い部分があります。しかし、それをWeb以外の業界に単純に当てはめることが良いわけではありません。むしろ反発を仰ぐ可能性は大いにあります。

古臭い考え方をしやがって、と一蹴するのは簡単ですが、そういう姿勢のベンチャーが多いことは非常に嘆かわしいことだと思います。オープンソースの考え方であっても、そうではなかったとしても、ソース元の権利者に対する敬意を最大限払い、どうすればWin-Winの関係が築けるかは十分に配慮すべきです。Web業界がマッシュアップをよしとしているのは、それによってWin-Winの関係が築けるからこそであることを理解しなくてはなりません。

人が集まればなんとかなるという安易な考え方を持つのではなく、様々なステークホルダーがいるなかで、なるべくWin-Winの関係が築ける様な形で、サービス・インできるようにするという姿勢を持ち、ビジネスを展開してほしいものです。